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かなり速い……。
野手投げからの速球はタイミングが取りづらい。投球動作が迅速でありながら、球まで速い。これは簡単に打ち返せる類の球ではないと感じた。
ヤンキー女子の桜木茉地は、校内の球技イベントにおいて常にトップの座を獲得してきた。バレーボールや、バスケットボールなど、彼女の運動神経は並外れており、対抗できる者がこれまで現れなかったそうだ。
「なんでも簡単にやってのける怪物。嫌になっちゃいますよね?」
林野さんは2球目も振り遅れてしまった。
顔が蒼ざめている西さんは、桜木茉地に挑む気力すら失っているようにみえる。
西さんの気持ちは理解できる。
しかし、野球は単に運動神経だけで勝負が決まる競技ではない……。
「大丈夫、勝てますよ」
「え?」
僕を見上げる西さんに笑顔で答えた。
「野球は怪物を打ち倒すことができるスポーツですから」
3球目。
ボゴッ、と鈍い音を立ててボールが3塁側へ転がる。ヤンキー女子のひとりがバウンドしてきたボールをキャッチできず、グラブの縁に当たって弾いてしまった。ピッチャーの桜木茉地がバックアップに入り、すばやくボールを拾い上げて1塁へ送球したが、球が速すぎて1塁のヤンキー女子は捕球できず、ボールは大きく後方へ逸れてしまった。
林野さんは3塁まで進み、ようやく動きを止めた。
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