第2球 俊足の麗人

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 10球中、ヒット性の当たりは9球であった。ライナーの打球が天花寺さんのファインプレーにより捕らえられ、3塁のベースに直撃してフェアになった打球を除き、内野を抜けたのは7球だった。 「アタイの負けだよ。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」 「やったー、これで甲子園への道が近づいた」  天花寺さんが僕の元へ駆け寄ってきた。  こここっ、これはもしや熱い抱擁が待っているのでは……と淡い期待をした僕がバカだった。両手で握手を交わして喜びを分かち合う。でも僕は今日は手を洗わず、いかにお風呂へ入ろうかと思案し始めた。  先ほど教室から野球部の部室へ向かう途中、天花寺さんから聞いた硬式女子全国大会についての話。高校野球は男子だけだと思っていた僕は自分の無知を恥じた。準決勝までは他球場で行われるが、決勝は甲子園球場で行われるそうだ。
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