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いいな……。
えっ……なにが?
今、「いいな」って思った?
甲子園を目指せる彼女たちのことが……。
いや、そんなことはない。
僕は強豪校の推薦を蹴って、今、ここにいる。
天花寺さんが、きらきらと輝いているからそう感じたのかもしれない。
部室に戻り、置いていた鞄を取って、すぐに帰宅するべく学校の校門を出た。
「おい、待ちな!」
「ひぃぃ!」
振り返ると桜木茉地と他ふたりのヤンキーが立っていた。下だけ着替えるだけだから、すぐに終わったのだろう。息を切らして追いかけてきたようだ。眉間を曇らせたまま、僕をじっとにらんでいる。
もしかして、先ほど完膚なきまでに打ち返された腹いせに僕を暴力に頼ってボコボコに痛めつけるつもりじゃ……。僕はこれでも逃げ足には自信がある。こうなったら、どこまでも逃げ切ってみせる。
「アンタの名前をもう1回教えておくれ」
「ふぇ?」
名前?
そんなのを聞いてどうするつもりだろう?
はっ!
わかった。
仕返しに僕のことをネット上であることないこと書き込んで、社会的に抹殺するつもりに違いない。
「えーーーーーーとっ、そのーーーーっ」
「早く言え!」
「はっはひっ!? 1年、志良堂太陽ですっ!」
言ってしまった。
さよなら僕の学院生活、まさかこんな形で終わりを迎えることになるとは。
「しらどう、てだ……そうか、いい名前だな……」
あれ? 僕の名前を褒めてくれた?
走ってきたせいか、頬にほんのりと紅がさしている。視線を逸らし、親指の爪を噛みながらなにか考え事をしている。すこし照れている?
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