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「んっ!」
女子校生の反対の手を掴み、なんとか二人とも川下へ落ちるのを防ぐことができた。
男の子を引き上げ、怪我がないかを確認した女子高生は、男の子をしっかりと叱った。命に関わることなのでとても大事なことだ。すこし注意しただけで、子どもの親に逆ギレされる時代。きちんと叱れる人間が今の世の中にどれほどいるだろうか?
「ところでキミは今年ウチの学校に入った男子生徒かな?」
「はい、志良堂太陽です」
うわっ。とても綺麗なひと。
すこし垂れた艶やかな瞳に見つめられているだけで、ドキドキしてくる。細身でしなやかな肢体に視線が行きそうになる。
「キミの走り方は非常に合理的だね。なにか運動を?」
「はい、中学まで野球をやっていました」
野球はボールを打った後の塁走において、ヒットかアウトかを試合中、何度も試されるスポーツ。そのため、スタートダッシュの重要性を理解しているつもりだ。
「それにしては、少しおかしい。ちょっと失礼するよ……ふむ」
「え、ちょっ、なにを!?」
「発達しすぎた大臀筋の影響か……キャッチャーをしていたのかな?」
すごい。なぜそれを……。
っていうか、いきなり膝から太ももまで触られて身動きが取れなくなってしまった。
たしかにキャッチャーって、膝を畳むため下半身が他のポジションより鍛えられる。ただ、そのせいで柔軟性が失われ、足の速さがいまいちなんだろうと言い当てられた。はっきり言って図星すぎていて、なんだか怖い。
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