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「わかり……ました」
「やったぁ! それなら決まりね、放課後迎えに行くから」
承諾してしまった。
とはいえ、まさか野球部のコーチを務めることになるなんて……。もともと野球部があったのは知っていた。だが、中学校の進路室でパンフで確認した際に「野球部」と書いていたが、まさか女子野球部だったなんて思いもしなかった。
うれしい。非常にうれしいが、心配でもある……。
天花寺 月さんは僕にとって、唯一無二のアイドル的存在である。遠くから静かに温かく見守るのが、ファンの美学だと考えていたのにまさかの急接近で、心臓がまだバクバクしている。今日か明日、自分が交通事故にでも遭わないかと不安になってきた。
トイレに行って気持ちを落ち着かせようと席を立ったが、やはり気持ちが高ぶっていたのか、教室の出口で他の生徒と激しくぶつかってしまった。
相手は女子生徒。僕は今でもそれなりに身体を鍛えており、身長175センチ、体重は65キロはある。
──そんな僕の方が吹き飛ばされた。
相手が彼女で助かった。
大門亜土さん。身長は180センチを軽く超えていて、体重は……女性の年齢や体重は詮索しないのが、身のためだと僕は知っている。
びくともしなかったどころか、はたしてぶつかったことに気が付いたかどうか……。眠そうにしながら虚ろな目のまま、自分の席へ座って豪快に寝始めた。
とにかく他の女子じゃなくてよかった。怪我でもさせたら、公開処刑されそうで怖い。
気を取り直して、トイレに向かって歩いていると、先の角からこの学院の天敵に遭遇してしまった。
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