プロローグ

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「お、お前は隣のクラスの男っ!」  隣のクラスなのは知っているが名前は知らない。僕が何かしたという記憶もないが、彼女に見つかると必ず因縁をつけられる。  赤毛ロングのくせ毛。前髪は作らずに左右に自然に分けている。瞳も赤いので、ハーフかクォーターかもしれない。 「どこへ行く? 変態野郎」 「なっ、なんてことを……僕はトイレに行こうとしているだけです」 「女子トイレで盗撮するつもりだな?」 「そんなことしませんよ、男子トイレに行くだけですから!」  彼女の言い分はこうだ。  今年から共学になったとはいえ、この学校をわざわざ選んで入ってきた男子は、絶対まともではないはずだ、と。  ちなみに僕は彼女を「女子」としてカウントしていない。どっちかっていうと、どこにでもいる陽キャ属性、イキり系男子のニオイがぷんぷんするから。 「ちっ、今日のところは見逃してやる!」 「いや、そもそも何もしてないですから!」  見逃してやった感を出したまま、赤毛の女子がすれ違いながら、もう一度舌打ちした。
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