第6球 プロ妹

6/7
前へ
/148ページ
次へ
「久しぶりだな、太陽(てだ)」 「あ、うん、雷闇も元気そうだね……」  身長192センチ。  高校1年生にして超高校級と呼ばれる怪物が、練習試合を終えすぐに僕の目の前にやってきて、縮こまった僕を見下ろしている。  八景シニアで彼とバッテリーを組んでいた。  そこで嫌と言うほど思い知らされた。  どんなに好きでも、どんなに努力しても才能(・・)には勝てないってことを……。  目の前の男は最初からチート能力を持っている癖に誰よりも努力する。そんな奴が近くにいるだけで、心が何度折れたことか。いい加減疲れたので、野球は趣味程度に続けようと諦めた(・・・)のに……。 「俺のところに戻ってこい!」 「いや、それは……」  雷闇はどこまで行っても物語の主人公だ。凡人が言ったら恥ずかしいセリフでも彼が言うと、物語のワンシーンに早変わりする。 「あれ、太陽(てだ)の元カレ? それは残念ですね」  これ以上、雷闇の目を見るのが耐えられなくなった僕は頭を下げたが、ふたたび月の声で、顔をあげることになった。 「誰だ、お前は?」 「私は天花寺 月。太陽(てだ)は私たち九家学院女子野球部の女房役なんです」 「太陽、どういうことだ?」 「あっ、これはつまり……」  よりにもよって、雷闇に説明することになろうとは。  入った高校が男子野球部がなく、誘われるがまま、女子野球部のコーチになったことを簡単に説明した。
/148ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加