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「素人の動き……でも」
先攻は野球部チーム。守備はヤンキーチームとなった。
投球練習をしている桜木茉地の球は、男子高校球児が投げているのかと見間違うほど球速が出ている。
しかし、投げ方がピッチャーのそれではなく野手投げに近い。
残りのふたりは完全に素人だった。互いにキャッチボールを試みるも満足にできていないし、投げ方も不格好である。
今回は人数が3対3ということで、2塁を設けていない。ホームと1塁、3塁のみの逆三角形の配置となっている。
攻撃側の1番は野球部のひとり林野さんである。髪型は運動部に所属する女子に多いショートボブで、がっしりとした体型は相当なトレーニングを積んでいることが窺える。素振りを見ても非常に鋭さがあり、期待が持てる。
しかし、片方のチームを応援することはできない。なぜなら、天花寺さんに審判を頼まれたからである。あくまでも公正な視点で両チームをジャッジしなければならない。
とはいえ、主審や塁審を包括した簡易的な審判をおこなう。一塁側の外側に立って審判するため。多少の緩さは避けられない。
「桜木さんを甘く見ない方がいいです」
「え?」
気がつくと、隣にはもうひとりの野球部員である西さんが立っていた。
「あのひと、怪物ですから……」
ゴッ──ボールが壁に当たる音がやけに重く響いた。林野さんのバットが完全に振り遅れたのが見えた。
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