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僕は必ず、ページを捲った先が後書きの締めとなるようにしている。
そうして次のページを空白で残す。
余韻を残すためだと言っているけれど、本当は僕の小さな我儘だ。
大切な人に伝えたい言葉がある。
いつまでも大切な人、明日香と会えなくなって、どれくらい経つだろう。
今もずっと大切な人、僕の半身のような君。
最後に明日香の微笑みを見たのは、僕のデビュー作品の出版が決定した頃だった。
明日香は、無理に笑おうとして、涙を溢した。
そうして、僕の前から消えてしまった。
剥がれ落ちた僕の半身、明日香の手を掴むことが出来なかった自分にがっかりとした。
明日香が涙を落としたならば、駆けつけて抱きしめてあげたいと今でも思う。
けれど僕には叶わない。
僕は明日香へ、溢れる想いを届けたくて、後書きの最後の空白に手紙を綴ることにした。
明日香は僕の気持ちを受け取ってくれたから。
友人伝に「ありがとう」と伝えてくれる。
そんな明日香が僕は愛しい。
会えなくても気持ちを届ける方法を見つけた僕は、明日香の幸せを誰よりも願う。
明日香が僕のラブレターを受け取ってくれる限り、必要としてくれている限り、僕は大切な明日香へ想いを贈り続ける。
大切な明日香が、永遠に微笑んでいられますように。
そうして、気が付けば、僕らはまるで近いのに、合わさることが難しい遠くへ離れ離れになってしまった。
全ては僕が、臆病だから。
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