ブレーキ

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「はい、映像はここまでです」  遮光カーテンが開き、教室内が明るくなった。  壇上にひとりの教官が立ち、咳払いをする。 「車は非常に便利な乗り物ですが、時に大惨事を招く物でもあります。  映像に出てきた誠也と茉莉のように、例えどんなに急いでいても車の安全確認は必要という事ですね。  出発前の確認として、車の周囲に子供や障害物はないか、タイヤはパンクしていないか、爆弾物が仕掛けられていないか。時々エンジンルームに猫が入り込んでいることもあるので要注意ですよ。ボンネットをバンバン叩いて猫をエンジンルームから追い出す『猫バンバン』を習慣づけるのも良いですね。  そして運転席に座ったら、まずブレーキペダルをチェックする。車にとってスピードを調整する大切な制御装置ですからね。  映像では下り坂でブレーキが利かず、どんどんスピードが上がっていきましたが、その際は落ち着いてエンジンブレーキとサイドブレーキを活用しましょう。まぁ、公道に出る前に一旦停止をしなさいと言いたいですがね。  エンジンブレーキは1段ずつゆっくりシフトダウンしていくこと。その後、サイドブレーキをゆっくり引き上げる、もしくは踏み込む。  エンジンを停止させることは絶対にやめてくださいね。ハンドル操作すらままならなくなるので危険ですよ。  あ、ちなみに最後の男は私が演じました。  とにかく運転時のトラブルは、焦らず冷静に落ち着いて対処するように心がけてくださいね。  では、本日の講習を終わります。  皆さん、お気をつけてお帰り下さい」  山を切り開いて山頂に作られた、大型運転免許センター。  講習が終わる時間帯には毎回低速車が続出で、ふもとに続く道は酷い渋滞が起きるとの事だ。 (おしまい。皆さま、車の運転には充分お気をつけて)
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