邪の若

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 両手首を掴まれ、頭上に押しやられ、抜け出すために蹴ろうとするがうまくいかない。 その男はさっきから、ごめんと泣きながら、俺にキスをしている。 抵抗して唇を自分で傷つけた俺のその血を優しく舐めながら、何度も何度も謝ってはキスをした。 もう、明け渡してしまおうか・・・。 足はもがくのをやめた。 腕の力も抜いた。 そのことに気付いた男が、戒めていた手を離した。 その男の首に腕をまわし、自分からキスをした。 泣きながらキスを続けたその男は、ずるずるとしゃがみこむと俺の腰に腕を巻きつけ、いまだ謝り続けている。 もう、謝罪なんていらない。 後は言葉だけでいい。 それに、俺が答えるだけだ。
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