2.鬼の眼の源流

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 凪が生まれてすぐの頃、みなは姉から「自分たちと同じ能力(ちから)を持つ孫が生まれたかもしれない」と伝え聞いており、それは今までの数少ない顔を合わせる機会で確信へと変わっていた。  しかし凪とみなが改めてゆっくりと話をするのは、今回が初めてである。 「それで凪ちゃんは、どんなことが訊きたいの?」 「あの……大叔母さんは、“鬼”って見たことありますか?」  そう口にすると、みなは絶句した。そして、凪の頭の少し上の方を暫くの間じっと見つめる。 (大叔母さんには、私の後ろに何か視えてるんだ……)  このような視線には、凪にも身に覚えがあった。人の背後には良いも悪いも含め、何かしらの霊が視えることがある。そんな時は凪も、相手の頭の少し上の辺りをじっと見つめることがよくあるからだ。そういうものが見えない者からすると気味の悪い行為なので、最近ではあまり長い間見つめないようにはしていたが。 「残念だけど、私は見たことが無いわねぇ。姉さんからも鬼の話は聞いたことが無いの。でもねぇ、私たちのお祖母ちゃんからチラッと、『本家には鬼を封じた伝説がある』って聞いたことがあるのよねぇ」 「え!?」  凪は思わず父を見た。すると父も目を丸くしており、思わず「叔母さん、本家っていうのは?」と訊ねる。 「本家っていうのは伊藤家のことじゃなくて、凪ちゃんや私の能力(ちから)のルーツって意味での本家だけどね。京都の山奥にある小波(さざなみ)神社っていう神社なのよ。そこに行けばわかると思うけど、ご先祖様のある巫女が、その身に鬼を封じたっていう伝説があるの」 (その身に……鬼を封じた?)  そのフレーズに、何故だか凪の心臓はそわそわと(せわ)しく動き出していた。暑くも無いのに、気持ちの悪い汗がじわりと滲み出す。  父親と拓也夫婦は、聞いたことの無かった本家の存在や鬼の伝説にただただ驚愕していた。反応からして半信半疑といった感じだが、彼ら三人にしても祖母と大叔母、そして凪の存在を目の当りにしているので、こういった伝説を端から否定はしないようだ。  みなの話によると、この鬼の眼の能力は代々女性にばかり顕現しているので、本家とは言えど、もはや他人と言っても差し支えないほど遠い縁戚関係だった。しかし、この能力が顕現するとかなり社会では生き辛いため、今まで先祖たちは神職や修験者、尼などの職に就かざるを得ず、生き方の助言と共に伝説のこともそれとなく語り継がれてきたのだと云う。 (鬼ってやっぱり居るのかな……)  白い大蛇の忠告について、信憑性が高くなったのは確かだ。
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