父の意向

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 おそらくコネ入社の彼女に忖度して、きちんと責任を取らせなかったのだ。  川村さんへすべての後始末を投げたことで、ある意味俺達は助かったが、彼女がどれほど北野さんに迷惑をかけられているか察した俺は、すぐに部長へ苦言を呈した。  最近人事に来たこの部長は、俺がノアケミカルの社長の息子だと知らなかったようだった。だからこの会社に俺がいる限り、北野化学を恐れて彼女に忖度する必要はないとはっきり言った。  部長の驚いた顔は見ものだった。きっと部長は北野さんをあのあと叱ったはずだ。俺の意図を察したと思う。  普段ならこんな越権行為はしない。だが、迷惑をかけられた俺達もそうだが、特に川村さんは今まで彼女のしりぬぐいを相当数しているんだろう。  それを思うと俺は我慢できなかった。彼女の苦労がどれほどか想像できたのだ。  その後、川村さんからすぐに社内メールが送られてきた。 『部長に何か言ってくださったんですね。ありがとうございました。ずっと胸につかえていたものがおりてすっとしました。並木さんの手続きは全部、これから私が心を込めて致します。ご期待ください!』 「……ぶっ!」
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