困った後輩

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困った後輩

 一時間しても北野さんが戻ってこない。  私は営業二部の部長に書類を届けるため、フロアを降りた。  相川君は人事からここの一課所属になった。北野さんはどこの会議室にいるんだろう。  営業二部一課には、同期で仲のいい笹野加菜がいる。 「あれ、凛花。どうしたの?珍しいね」 「あ、うん。部長に用があって……」 「今、また北野化学の社長が来ていてね。二課のほうの会議室にいるよ。こっち使ってるんだ」 「それって、担当役員じゃなくて、二部長が入っているの?」 「うん。北野さんも一緒に入ってたよ。あ、凛花が知らないわけないか」 「うん、もちろん。それにしても、しょっちゅうだけどね」 「本当だよね。何考えてるんだろう、あの社長……」  本当にその通り。北野化学の社長は二週間に一度くらいは必ず来てる。  その都度、娘である彼女を営業部に呼び出す。仕事中だっていう意識が親子ともにない。  つける薬もないとはこのことかもしれない。人事部長の苦悩もここにある。 「ねえ、凛花」 「何?」 「うん。お昼一緒に今日どう?」  これは何か相談かな?加菜はわかりやすい。
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