電話の人

7/10
前へ
/53ページ
次へ
 親御さんの躾の問題?育ち?ただ、横顔に彼女の孤独が見えて、今に会社に来なくなるんじゃないかと少し心配している。だから、私は我慢している。  ここ最近は、仙台支店からの電話だとわかるランプがついているときは私が率先して出る。周りも私が奔走していたのを知っているので、仙台は私担当だと思って電話に出ない。  まあ、そのおかげで篠田さんや並木さんと親しくなり、いつか実際にお会いして話してみたいと思っていたほどだ。彼もそう思ってくれているとは思いもしなかった。  私は並木さんから自分の仕事を認めてもらえたことだけでもうれしいのだ。バリキャリとは思わないが、この仕事が大好き。好きなハンドクリームの会社だから受けたが、仕事は楽しくて幸せだ。  眠気もふっとんで、元気になった。異動もあり、ギアを上げて仕事に集中しはじめた。 「おい、川村」  顔を上げるとそこには甘いマスクの相川君がいた。彼は一年前までここにいた同期だ。 「あれ?おはよう。どしたの、朝から」 「どしたのじゃないよ。お前、なんか目の周り隈出来てるぞ。寝不足か?」  嘘……どうしてわかるの? 「化粧直してくる……」
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

576人が本棚に入れています
本棚に追加