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「北野さんの結婚の話、少し聞いたんですけどお相手は再婚の人で、彼女最後まで拒んでいたそうです。少しかわいそうになっちゃった。うちの会社にいたのも、ご実家のためでご本人はいたくなかったんじゃないかなと初めて思いました」
「まあ……そうだな。菫化粧品の社長は結構な歳だ。40歳過ぎてる。それに、あの社長は浮名を流すことが多くてね。顔はそこそこいけてるが、女泣かせらしい。浮気が原因ですでにバツ1なんだよ」
「……!」
声も出ないくらい驚いた。それはひどい。初婚の若い子をそんな男に嫁がせる親って、何なの!
「北野化学は業績が悪化していて、彼女を嫁がせる会社に救ってもらおうとしていたんだよ。だからそれが結婚の条件なんだ」
「ひどくないですか?ひどいですよ……かわいそうだわ」
「確かに気の毒だ。だが、あの子もなかなかだ。人事での仕事ぶりを見れば、わかってるだろ。あのずうずうしい根性があればやっていけるかもしれないぞ」
「信也さんったら……」
「まあ、俺が言うことじゃないな。迷惑をかけられていた君が言うべきことだろうが、君は優しいからな。そんな風には思わないんだろ?」
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