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「そうしろ。おい、北野は?」
「また、トイレです」
「はー。ったく、しょうがねえな。営業部にあいつの親父さんが来ているから呼んでくれ。借りていく。部長にあとで川村から言っておいて……」
相川君は北野化学という北野さんのお父さんが社長をする会社が取引窓口になっている部署に異動した。
社長さんがよく挨拶に来る。そして娘である彼女に会いたがり、相川君は彼女を迎えに来て借りていく。
私は相川君ににっこり微笑んだ。北野さんはほとんどお仕事しませんから、どうぞ、どうぞお連れくださいと顔に書いてあったかもしれない。
「はい、了解です。どうぞお連れくださいな」
「ぷっ!お前、顔が嬉しそうなんだけど……本当正直だな。おい、また飲みにいこうぜ」
「はいな」
了解とポーズをとると、カッコいい笑顔で背中を向けた。すると声がする。
「相川くーん、私とも今度飲みに行こうよ」
三井さんが遠くから手を振っていた。
「はい、いつでも誘ってください」
相川君が手を振り返した。三井さんは嬉しそう。彼女はふたつ上だが、相川君を好きだったらしい。
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