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「お姉ちゃんはお父さんによく似てるって言われるのに、なんでわたしは全然似てないの?」
真奈の疑問に、母は目を逸らし曖昧に笑って答えなかった。
「親子でもすぐわかるくらい似てる人ばっかりじゃないよ。どっちにも似てなくても、実はおじいちゃんやひいおばあちゃんに似てるとかってこともあるんだ」
横から父が言い添えてくれる。
「真奈の友達の渡辺さんちの芙美ちゃんだって、お父さんにもお母さんにも別に似てないじゃない。私とお父さんもそっくり同じじゃないでしょ」
仁美もまったく気にならないようで、例を挙げてあっさり話を終わらせた。
別に悩んでいたわけでもなくその場は納得したのだが、ふとした拍子に気に掛かって再度訊いてみる。
「ねぇ、お母さん。わたしは誰に似てるの?」
母と二人きりだったので以前のように宥めてくれる家族もおらず、ついしつこく食い下がってしまったのだ。
おそらく誰かの名が出さえすれば、実際に似ているか否かに拘わらずそれだけで気が済んだのではないか。
しかし、真奈が言葉を重ねるごとに目に見えて不機嫌になる母に、さすがに幼心にも空気を読んで二度と話題には出さなかった。
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