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◇ ◇ ◇
「仁美ちゃん、大きくなったねぇ。ますます勇に似てきて……」
「いらっしゃい、おばあちゃん。おじいちゃんも」
年に一度、遠路遥々自宅を訪れては泊って行った父方の祖父母。
──思い返せば、いつもその場に母はいなかった。
「あのね、お父さんはちょっと遅くなるんだって」
「そうなんだね。おばあちゃん、これからご飯作るよ」
迎えた姉に嬉しそうに答えながら、祖母は荷物の中からエプロンを出している。
「仁美ちゃんはハンバーグ好きだったよね。いまも変わんないの? 他のものがいい? おばあちゃん、洋食はあんまりいろいろと作れないんだよ、ごめんねぇ」
「おばあちゃんの作ってくれるごはん、なんでも美味しいから好きだよ。ハンバーグも大好き!」
「そりゃよかった。じゃあ、今日もハンバーグでいいのかい?」
仁美の言葉に、祖母は相好を崩した。
「うん! 真奈も好きだよね?」
「好きー!」
「……ああ、そう」
訊かれて両手を上げて答えた真奈に、祖母は興味なさそうに素っ気なく呟いただけだった。
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