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砂糖菓子のような幸せを
初めてフェリクス様と出会ったのはまだ王宮に勤めて間もない頃。
上司や同僚に仕事を押しつけられて昼と夜の食事を逃した日、裏庭で泣いている僕に声をかけてくれた。
『1つ食べてごらん。きっと涙も止まって笑顔になれるから』
初めて食べた砂糖菓子は今まで食べた物の中で1番甘かった。
そして初めて会った時からフェリクス様は誰よりも優しかった。
だから······
「ここは······」
「リュイ、おはよう。気分はどう?」
ゆっくりと体を起こして気がついた。
僕は豪華な調度品が並ぶ部屋のベッドの上にいると。
入ったことのない部屋。
だけどここがなんの部屋なのかなんとなく察しがつく。
「ここは······フェリクス様の部屋、ですか······?」
「そうだよ。リュイったら3日間も寝ていたんだよ」
「へ······?」
寝ていた?
3日も······?
「まぁ、正確には半分寝たまま起きたことが何回かあったよ。その間に水と俺の魔力をあげて──」
「し、仕事っ!」
終わった······
確実に解雇される。
クリアになった頭に浮かぶのは今後の不安。
ただでさえ薄給で全然貯金がなく、今月の給金も上司に無給を言い渡されているから期待できない。
家は寮だから即出ていくことになるだろうし、孤児院には帰っても余所者扱いされて入れてくれないのは目に見えている。
ど、どうしよう······
「大丈夫だよ、リュイ」
フェリクス様はそう言って僕を抱き締める。
ああ······
やっぱり、フェリクス様から甘い匂いがする······
触れられた場所からじわじわと甘い痺れが広がっていき、頭がふわふわしていく。
次第に不安や焦燥感が消えて幸せな気持ちで満たされる。
まるで、大好きな砂糖菓子を食べたあとみたいに······
「クスッ······リュイは可愛いね。気づいてる? リュイの水色の目、とろんってしてるんだよ。気分はどう?」
「······幸せ、です」
「そっかぁ」
スッと出たこの言葉にフェリクス様は嬉しそうに笑う。
それを見ただけで甘い匂いが強くなったと錯覚する。
「覚えてる? 俺がリュイに『愛してる』って伝えたの」
「はい······あっでも、身分が······」
そっと唇に人差し指を当てられた。
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