砂糖菓子のような幸せを

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 「聞きたいのは身分差じゃなくてリュイの気持ちだよ」  「僕、の······」  「そう。リュイは俺のこと嫌い?」  僕は首を横に振る。  嫌いじゃない。  初めて会って優しくされた時からずっと······  「じゃあ、好き? ちゃんと教えて」  「あっ······す、好きです······!」  言ってはいけない言葉。  この恋は不相応な身分違い。  罪ともいえるこの気持ちはずっと表に出しちゃいけないもの。  「もう1度言って」  「好き、です」  「もう1度」  「好きです。大好きです!」  なのに1度でも口にしてしまえば抑えることなんてできなかった。  あれだけダメだと思っていたのに、もうそんなことがどうでもよくて······  「なら、前の仕事はいらないよね。これからリュイはここでずっと俺のために生きていればいいから。それが新しい君のお役目(仕事)」  「新しい、仕事······」  「そうだよ。俺のために息をして、喋って、笑って······最後は俺と一緒に死ぬ。簡単でしょ」  フェリクス様のために息をして、喋って、笑って、最後は一緒に死ぬ······  たしかに簡単な仕事だ。  簡単だけど······本当に頷いて大丈夫なのかな。  頭の片隅に残ったわずかな理性がなにかおかしいと訴えている気がしてすぐに頷けなかった。  「うーん······もしかして、まだ理性が残ってるのかな? 頭がふわふわして思考を鈍らせてるつもりなんだけど······」  「んっ!」  頷こうか迷っていた僕はまたフェリクス様と口づけをした。  逃げる前にフェリクス様の舌が僕の口内を舐め回し、口内に唾液がどんどん溜まっていく。  「あ······」  甘い······  溢れる前に飲み込んだ唾液。  それが砂糖菓子なんて目じゃないくらい甘くて、頭の中まで浸食していく気がした。  力がどんどん抜けていき、次第になにも考えられなくなる。  「これで大丈夫かな。やっぱり体液摂取の方が効果が高いんだね。塊とはいえ、砂糖菓子サイズは小さいし」  「······?」  フェリクス様の声が聞こえるけどなにを言っているのかうまく理解できない。  なんとなく、大切なことを言っている気がするけど······  「少しずつ量と濃度を増やして与えたけど、リュイって魔力への耐性が高くて1年近くもかかちゃった。でも焦って高濃度なのを一気に摂取させたのは失敗だったかも。ここ最近、ずっとしんどかったよね? 俺のせいでごめんね」  「フェリクス、様······」  「ん?」  もう、全部どうでもいい。  だってもうなにも考えられないから。  「フェリクス様が好きです······ずっと、大好きだったんです······」  初めて優しくしてもらった。  甘い砂糖菓子をくれた。  名前を呼んで、頭を撫でて、一緒にいてくれた。  それがこれからも続くなら、きっと······  「僕、フェリクス様といる時だけが幸せなんです······!」   「クスッ······俺もリュイといる時だけが幸せだよ」  この先にあるのは優しくて甘い幸せだ。
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