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本当はすぐにでも俺のものにしたかったけど生まれつき魔力の多い俺には敵が多く、裏切りや暗殺未遂なんて日常茶飯事。
それに妾腹の王子とはいえ、突然王族が話しかけたらきっとリュイはびっくりする。
だからリュイが孤児院を出る成人までに色々なことをした。
王位継承権を放棄したり、話しかける接点を作るために院の職員を買収して王宮に就職するよう手を回したり。
リュイの家族を見つけ出したり、話をしたり。
そして1年前、ようやくリュイが俺のものになってくれた。
「リュイ、いい子にしてた?」
「······!」
天蓋から垂れ下がるカーテンを捲った途端、リュイが飛びついて唇を重ねてきた。
水音が響く舌が絡み合うキスに夢中なリュイがとにかく愛おしくてしょうがない。
よく見るとリュイのまわりには空っぽのガラス瓶が転がっている。
全部食べちゃったかぁ。
「ダメだよ、リュイ。一気に食べたら酷い酩酊感に襲われるって言ったはずだよ」
「ふぇりくす······」
リュイはもう俺の魔力なしでは生きられない体になってしまった。
でも魔力を摂取すれば思考や意識が鈍り、ちゃんとした会話ができない日も珍しくない。
『フェリクス様が好きです······ずっと、大好きだったんです······』
依存症というのは恐ろしいもので、それを手に入れるためなら本当になんでもしてしまう。
もしかしたらあの日、俺に言った"好き"は本心ではなくて魔力を貰うための嘘なのかもしれない。
カミルの言った後悔はこれのことを言っていたんだろう。
だけど、もし過去に戻れても俺は同じことをした。
リュイの気持ちよりも自分の気持ちを優先してしまう。
俺は普通のやり方ができない。
だってわからないから。
『いいか。私たちは貴様を弟として扱うつもりはない。死にたくなければ身の程を弁えて生きろ』
気まぐれに手を出された1人の使用人。
お手つきになったのは1度だったが、そのたった1度でその使用人は王子を産んだ。
望まれて生まれた子じゃない。
なのに運命は皮肉にもその王子は異母兄弟たちの中で1番魔力量が多かった。
身の丈に合わない強大な力のせいで比べられ、敵視され、何度も殺されかけた。
もういっそのことこの力を使って世界を滅ぼしてみようかと考えたこともある。
それくらい王子─俺にとって世界というのは退屈で寒い場所だった。
そしてだからこそ、暖かな光に恋い焦がれてしまう。
「約束するよ、リュイ。君が死んだら俺もすぐに死んで後を追いかける。絶対に1人にしない。君だけをずっと愛し続ける。だから······」
──俺を1人にしないで
そんな願いを込めながら俺はリュイの口に砂糖菓子を1粒運んだ。
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