窓鷲荘のお坊ちゃま

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 パタパタと、小さな羽音。本棚に寝そべっていた、二番目に連れてきた妖精の女の子が、新入りのところへ飛んでいく。赤毛の彼女は気が強いが、面倒見もいいから大丈夫だろう。暖炉の中や、鏡の向こうで眠っていた子たちも、目を覚ましてもぞもぞ動き始めた。  僕の肩にはドラゴンが懐いてきて、膝の上にはペガサスが舞い降りた。彼らは昼間はこうして小さいけれど、月明かりの中では元の大きさに戻れるんだ。  みんな、木や石や葉っぱ、花びらなどに身を寄せていたのを、僕が見つけた。時には、しぼんだ風船にくっついて途方に暮れていたり、瓶の中から困った顔で訴えてきたり。  ばあやにも、ほかの人間にも見えない。どうやらこれは重大な秘密らしいぞ、と気付いたのは五歳の時だった。母は見えていたかもしれないが、僕が十歳の時に亡くなった。母の友達だったのかもしれない青い女神は、満月の晩になるとこの家を訪れる。今夜が楽しみだ。  僕が子供の頃に組み立てた模型飛行機は、いかめしい顔の小人たちの隠れ家になっている。彼らは、知恵があって心優しい。時々こっそりこの部屋を抜け出して、ばあやの仕事を、彼女が眠っている間に手伝っている。  天井には、衣を大きく広げた天女様。彼女はいつも眠そうだ。  なかなかの大所帯だろう?  内緒だよ。
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