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ケイと一緒の生活にシンもだいぶ慣れたが、ケイを人間に戻すという目標は何も進展しなかった。
データは全てプリントアウトして、たくさんの資料を読み込んでいる。
プリントアウトしておけば、データがなくなろうが壊されようが、手元にあるので、シンは敢えてアナログな方法を取っていた。
「なかなか見つからねーな…」
「シン、少し休憩したらどうですか?コーヒー淹れましたよ」
「サンキュー。んじゃ、ちょっと休憩するわ」
シンはケイがいるダイニングに行き、窓の外を見ながらコーヒーを啜る。
真っ暗どころか真っ黒な外は、暗礁に乗り上げた自分の今を表しているようで、シンはダイニングだけでもカーテンを買おうと密かに決めた。
「何か新しい情報とかありました?」
「ねーよ。どれも似たり寄ったりで、ゾンビはおとぎ話になってる。最近あったことなんだけどな…」
「おとぎ話…。そうだったら、僕もゾンビにならなかったのに…」
ケイの呟きにシンは唇を噛みしめた。
ゾンビ化しても理性をなくさなかったことで、問答無用で銃を撃つなんてできなかった。
それが本当によかったのか、シンの中では未だに答えは出ないままだ。
ケイはそう悩むシンの姿を見ては心を痛めた。
理性がなくなっていれば、シンは迷わず銃を撃ったはずだ。
けど、シンは自分を生かしてくれた…それはケイも感謝と共に複雑な気持ちのままだった。
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