神官ユフィ

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「あ、あっ、ごめんなさい! まさかお会いできるとは思わなくて」 「本当に危ういところだった、私がどれだけどうか待っていてほしいとお願いしても、こういうとき、特に最近のエリオットはすぐに帰ってしまうんだもの。そんなに私と一緒に居たくないのかと、少し寂しくなるよ。……なんて冗談。さあ、立ち話も何だし中に入ろう」 「はい、ありがとうございます」  ユフィはにこりと笑みを深めると、扉と地面の隙間に爪先を差し込み、跳ね上げるようにして弾みをつけて扉を引いた。ギギッ、という木の擦れ合う音とともに重い扉が動き、エリオットは勧められるままにあわあわと内部へ入り込んだ。  薄暗い祭殿へ入り込むと、ユフィはばくばくと煩く高鳴る胸を抑えるようにバスケットを抱え込んだ。ついため息が漏れる。焚き染められた木香と新緑の匂いの混じった清々しい香りに心が凪ぐが、ユフィからも同じ香りがしていたことを思い出し、また息が苦しくなる。 「さあ、どうぞ」  扉が閉ざされる重い音とともに、前に回り込んだユフィが最奥部の祭壇へ向かって真っすぐに伸びた身廊を指し示す。その身廊の終点、小さな説教代の奥には天井から床までを覆い尽くすほどの壮大なステンドグラスが嵌め込まれていた。精霊石で彩色された青を基調とした図案は、真青な精霊を前に剣を持つ甲冑の騎士が(ひざまず)く、建国神話をモチーフとしたものだ。
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