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青金色の婚礼衣装
窓の向こうの大通りでは、しとしとと静かな雨が降りそそいでいる。
雲が薄いのか、それでも空はほの明るい。
此処は大通りの片隅にある小さな花屋。店内には鉢植えから切り花まで、瑞々しい可憐な花々が所狭しと並んでいた。
エリオットは、色とりどりの鉢植えが並ぶ出窓の傍らにある二人掛けのテーブルセットに、ひとり腰かけていた。
黒く長めの前髪の間から覗く真剣な深蒼の瞳は、真っすぐに手元の縫い針へと注がれている。
エリオットは、自分の瞳より鮮やかな青に染め抜かれた上質な生地に、きらびやかな金糸で刺繍を施しているところだった。
青は、精霊との誓約を意味する高貴な色。
エリオットの瞳を見て、彼はそんな伝承を語り、綺麗だと褒めてくれた。
そしてサルビアブルーは、このアウレロイヤにおいて婚礼衣装にのみ使用される特別な色彩。
花嫁と花婿の婚礼衣装は、仕立屋ではなく彼らにとって身近な親しい人物の手で仕立てられる。
エリオットが今繕っているのは、もうじき見知らぬ誰かの花婿となる想い人のための装束の一部なのだった。
――僕はけして親しい人ではないから、自己満足にしかならないかもしれないけれど。
かならずしもこれを受け取ってもらう必要はない。ただ自分の思いにけじめをつけるための、ある種の儀式でしかない。
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