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神官ユフィ③
軽やかに歩を進めるユフィに続いて、建物と外廊下に囲まれた中庭へ出る。
すると燦々と降り注ぐ日差しのもと、規則的に植えられた薬草やハーブが青々とした葉を揺らしていた。
この祭殿の中庭は、野草園として利用されていた。採取された薬草を薬にして売り、祭殿の運営費としているのである。その面積はけして狭くはない、十人の子供たちがめいっぱい駆け回るほどの広さがある。
その片隅に佇立するモクレンの木陰が、恒例となりつつあるティータイムの会場だ。
猫足の円卓に揃いの椅子が二脚、テーブルの上には既に湯気を立ち上らせるティーポット。素朴なカップはソーサーに伏せられており、ティースタンド上の甘い焼き菓子の周囲を、青と白の蝶がひらひらと舞い踊っている。
「わ、美味しそう……!」
「でしょう? さあ、さっそくどうぞ、遠慮しないで」
作業を急ぐあまり羽織ったままにしていたローブを脱ぎ、エリオットは口をへの字にした。白いシャツにサスペンダーと長ズボンという、庶民的な出で立ちがどうもこの場にそぐわないというか。
「エリオット……? 座らないの?」
「あ、いえ!」
慌ててユフィの対面の椅子に腰かける。ユフィに紅茶を注いでもらう代わりに、エリオットが二人分のお菓子を取り分けた。
「ああ、私はとりあえずこれで十分だよ、ありがとう」
「えっ……でも、ハムサンドだけじゃ」
「いいんだよ、エリオットに食べてほしくて用意したんだ。好きなだけ食べてね? ああ、余っても箱に詰めて持ち帰れるようにするから、安心して」
ユフィはにこにこ笑って、砂糖もジャムも入れないブラックティーに口をつけた。
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