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青い髪が、精霊に誓いを立てた王家に連なる者の証だからだ。白銀に近い自身の頭髪は、光に透かすと青みがかって見える。青みの強い兄弟とは異なり目を凝らさなければ気づかないような色味の変化ではあるが、ユフィにとっては自身の血統を証明し、時には枷となりうる鬱陶しい色だ。
それなのに、今この手の内にある花は、なんと清々しく心洗われるような色をしているのだろう。
糸を手繰り寄せるように連想したのは、先日の誕生日パーティーに参加してくれた、濃紺に淡青色の髪を持つ兄弟の姿。
――嬉しかったけれど、あそこにいるのがエリオットだったらよかったのに……ご馳走もあるし、きっと喜んでくれた。
どうして居てくれなかったのだろう。いや、責めるべきはアウレロイヤ家でもエリオットでもない、招待客さえろくに選べない自分の立場だ。
――あれ、私は王弟だよな。しかも利発で人望がある。叶わないことなど、何一つないはずじゃないか。
『……ユフィさま。ごめんなさい』
『えっ、なあに、どうしたの』
『あの、そんなものしか用意、できなかったから。ユフィさま、たくさん素敵なものをもらってるはずだってこと、わすれてました。つくることにいっしょうけんめいで……おいわい、したくて』
『⁉ ま、待って、違うよ! ありがとう、ありがとうエリオット。ごめんね、寝ぼけてぼうっとしていただけなんだ……っ』
エリオットがべそをかきながら花冠を取り上げてしまい、ユフィは慌ててそれを奪い返した。鋭い葉に皮膚を切り裂かれた気配があったが、これ以上エリオットを悲しませるわけにはいかない。エリオット自身に怪我はないようだし問題ない。これまで幾度となく他者を魅了してきたあの微笑を取り繕い、花冠を頭に乗せ直す。
『うちには無い花ばかりで嬉しいな。どう? 似合うかな』
『……うん! えへへ、よかったあ……』
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