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エリオットは赤くなった目元を擦りながら、照れたように笑う。
――欲しい。
そんな感情が胸に湧いたかと思うと、空いていた窪みにすとんとおさまってしまった。
エリオットが、欲しい。どんな形でもいい。傍に置いておきたい。こみ上げた小さな望みがめきめきといやな音を立てて渇望へと膨張していくのを感じた。
すぐにアウレロイヤ領主へ掛け合った。あの子が欲しい。いずれは庭師か下男か馬番か、どんな形でもいいからこの家で召し抱えてほしい。
温厚で楽観的な領主が、ヒキガエルのような声とともに顔を青黒くしたことを覚えている。
『……それは、陛下に伺いませんと』
なるほど、まだ成人を迎えていない己の後見はあの兄が引き受けてくれているのだった。雇用期間内の賃金の支払いだとか、許可を得るべき事柄は多いのだろう。そう納得して手紙を出すと、なんと宮城に呼び出されていた。
そういえばしばらく城を訪れてはいなかった、この件を口実に母や甥と親交を深めよとでも言うのだろうと、これも何の疑念もなく参じた。
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