精霊の御子

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 ユフィは拳を握りしめた。わかりたくはないが、わからざるを得ない。エリオットは自身の出生の秘密を知らない。貴族であるユフィが「ぜひ使用人に」と望めば、例え嫌だったとしても無礼に当たるとして断れないかもしれない。  それが彼の自由を奪うという条項に該当しかねないのだ。  でも、いやだ。エリオットが欲しい。傍に置きたい。このまま自由に生きたら、どうなる。エリオットは素朴な子だ、近所の同じ年頃の娘とすぐに結婚して、幸せな家庭を築くだろう。あるいは花屋を継ぎ、すっかりうだつが上がらなくなった頃、愛らしくて気立ての良い若い娘と結ばれるのかもしれない。  どちらも平凡でありふれた幸福な人生だ。けれどそこに、ユフィはいない。そんなことは耐えられない。あの子の傍には、自分が居なくてはならない。  エリオットと過ごすようになって、やっと自分の生まれた意味を理解したのだ。  綺麗な服と美味しい食事、彼のためにあつらえた様々な調度品、そして美しい花々に囲まれて微笑むエリオット。自分の権威は、容貌は、エリオットにそんな幸福を与えるために存在しているに違いないのだ、と。 『――――強要しなければ、よいのですね』 『……ユフィ?』  王の主張は理解した。  ならば、エリオットが自らユフィの傍に侍ることを望むようにすればいい。ユフィにはそれを行使するだけの実力と自信がある。 『お願いがあります、陛下』 『……聞き分けろユフィ、こればかりは私の一存では』 『私をアウレロイヤの祭殿の神官に推薦してください』  何を言い出すのか、と王は訝しげに眉間の皺を深くする。
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