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満足感に包まれながら戸口へ向かおうとしたエリオットの手を、ユフィが慌てたように掴んでくる。
「ま、待ってくれ」
「……ユフィ様?」
エリオットは小首を傾げつつ、ユフィの顔を見上げた。その顏には困惑が滲んでいる。まるで何かを言うべきか否か、逡巡しているように見えた。
――な、なんだろう……結婚の話、かな。
聞きたくないけれど、引き留められたのに無視するような無礼な真似は許されない。心臓がどくどくと深いな音を立てている。言うなら、早くしてほしい。エリオットは固唾を呑んで、その花びらのような唇が声を紡ぐのを待つ。
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