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すれ違う思い③
「あの……あの祭りの夜、エリオットの気に障るような真似をしてしまったのかな」
「……えっ?」
ユフィが真剣な面持ちで軽く身を屈める。一瞬、軽く唇を噛んだのが見えた。
「今日も随分帰りを急いでいるようだし、仕事を休んでいたのも、私に会いたくなかったからなのかな、なんて……」
ユフィは言いにくそうに口をまごつかせている。エリオットは動揺のあまり言葉が出てこなかった。
彼を避けていたことは確かだ。けれど、まさかすぐに気取られてしまうほどあからさまに態度に出ていただなんて、自身の演技力の無さにショックを受けた。そして、何一つ悪くないユフィに気を遣わせてしまったことにも、指先の血の気が失せるほどの罪悪感がこみ上げてきてしまった。
今度は分かりやすく沈痛な表情をしてしまったのだろう、ユフィが慌てたように言葉を重ねる。
「疑っているわけではないんだ! いや、そうとしか受け取れないかもしれないけれど……責めようだとか、問い質そうだとかそういうつもりではないんだよ。ただ、私が何かしてしまったのなら、謝らなければいけないと思って……」
「いえ……こちらこそごめんなさい、ユフィ様は何も悪くないんです」
エリオットは精いっぱいの微笑を浮かべて、明るく声を張る。
――実際、悪いのは勝手に話を盗み聞きして、ショックを受けた僕自身だし。
ユフィは不安げに視線を彷徨わせつつ、「そうか」と呟いた。少なくとも表面上は納得してくれたらしい。
「すまない、本人を前に答えづらいことを尋ねてしまって。だめだな、焦るあまりそんなことにすら気づけなかった」
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