すれ違う思い③

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「そんなこと! 誤解させてしまったのは僕ですから」 「ありがとう、エリオット。けれど、もし本当に何か私に至らないところがあると感じたら、すぐに教えてほしい。私に直接でなくても構わない、シェ……他の神官たち、とか。お菓子の量が多すぎて困るだとか、紅茶がぬるいだとか、焚き染めた香木の匂いが気に入らないだとか、本当に些細なことでも構わないから」 「ええ⁉ そんな……あ、そっか……わかりました。とはいっても、ユフィ様はいつも完璧なお方ですから、僕にご指摘できることなんてないと思いますけれど」  きっと、この反省点を想い人との逢瀬に生かそうというのだろう。努力家なユフィらしい申し出だ。本当にその方のことが好きで、本当に必死なのだなあ、と寂しさより先に感心が湧く。冷めた紅茶は飲みやすくて好きだし、香木はどれもいい匂いがして、日替わりに違う匂いを嗅ぐのが楽しい。ユフィの全てを受け入れてしまうエリオットに言えることは何もないだろうが、彼のために気に留めておくことにしよう。 「……完璧? 私が?」 「? はい。綺麗で、清く正しくて、出来ないことも克服(こくふく)しようと努力なさっていて……ユフィ様のためにあるような言葉だと思います」  そんなに意外そうな顔をするような話題だったろうか――きょとんとしたユフィの顔を見上げていると、途端に、その頬がふわりと綻ぶ。まるで森の奥深く、年に一日しか咲かない花が朝靄の中でひっそりと花開いたように、密やかに、妖艶に。 「っ、君にそんなふうに思ってもらえていただなんて……」 「へ? そんな、きっと僕だけじゃありません。皆、ユフィ様のことを尊敬していると」
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