237人が本棚に入れています
本棚に追加
けれど、こんな風に尋ねられてしまったらもう駄目だった。
エリオットは唇を引き結んだり、噛んだりを繰り返して――ようやく、心を決める。
「……はい。大好きです」
口にした瞬間、思いが溢れて止まらなくなる。
――好き、好きなんだ僕は、身分違いでも、身の程知らずでも、ユフィ様のことが……。
「――…………!」
本人が尋ねたから素直に本心を吐露したのに、当のユフィは軽く眼を見開いて、唖然としている。
どうしたのだろう、適当にあしらうことを望まれていたのだろうか。エリオットが狼狽えて目をぱちくりさせると、ユフィが慌てたように口を開く。
「エリオット……? どうして、泣いて」
問われた瞬間、頬をつうっと何かが伝い落ちる感触に、エリオットははっとした、
弾かれたようにユフィから身を引き、そっと頬をなぞる。袖にシミができて、そこでやっと無自覚の内に落涙していたことを知った。
「あ……え……これ、は、ちが……」
見上げたユフィは、伸ばした手を宙に浮かせたまま困惑している。
失敗した。エリオットは顔面蒼白になる。
――ちがう、こんなの、また誤解させてしまうのに……!
どう受け取られるにしても、その結果が最悪なものに変わりはない。彼を困らせるか、傷つけるかのどちらかだ。
「っ……、ごめ、んなさい……!」
エリオットは混乱して、ユフィの静止も聞かずに駆け出していた。
最初のコメントを投稿しよう!