晴天の霹靂

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晴天の霹靂

 あの日、祭殿(さいでん)を飛び出して以来、エリオットは聖青の絹織物と金の糸を手に、ひとり店先のテーブルに向かい続けていた。  ユフィへの思いを終わらせるためだった。  突然逃げるようにその場を辞したエリオットを、ユフィは奇妙に思っただろう。そして敏い彼のことだ、それまでのやり取りからエリオットの想いに気づいてしまっているはずだ。  だから、もういっそのこときちんと告白することにした。少しでも長く傍に侍るために、自身の感情から目を背けるだなんてことはもうやめた。  彼が結婚相手とともに遠くへ移住してしまうこと、あるいはシェリーズとの契約を打ち切ることは、エリオットの気持ちに関係なく訪れる未来なのだ。そして冷静になってみると、ユフィはけして薄情な人物ではない。エリオットの告白を受けて、不快感から関りを断ったりはしない。気づいてあげられなくてごめんね、と気を遣わせてしまうかもしれないけれど、次には「エリオットにも素晴らしい相手が見つかるよ」と笑いかけてくれるような人だ。  臆病で意気地なしのエリオットが、何かと理由をつけて思いを告げることから逃れ続けていただけなのだ。  そんなことを考えながらシェリーズへの帰路を辿るエリオットの目に、あの華やかな青と金色が飛び込んできた。  ――そうだ、婚姻装束を作ろう。  唐突に、そんなことをひらめいた。  本来、花嫁や花婿と親しい者たちの手で仕立てられる代物だ、エリオットという他人では不十分かもしれない。けれど別に受け取ってもらわなくてもいい。エリオット自身が時間をかけて育んできた恋心と向き合う時間を得られれば、それでいいのだ。
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