晴天の霹靂

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 幸か不幸か、急遽、翌日からシェリーが店を空けることになっている。長い間、子どものできなかった遠方の娘夫婦に第一子が誕生したため、お祝いに向かうことになったのだ。想定から一月近く遅れたことを除けば、以前から決められていた予定だった。この間、エリオットは一人でシェリーズを切り盛りすることとなる。シェリーからは店を閉めても構わないと言われていたが、今後の勉強のためにもできる限り営業を続けることにした。  とはいえ、一人では手が回りきらず縮小を余儀(よぎ)なくされる。祭殿への配達をジンの家に任せる口実を得られ、内心でひどくほっとしていた。  くわえて、季節外れの長雨がアウレロイヤの街に逗留(とうりゅう)していた。雨の日は客足が遠のく。裏手にある花畑の手入れと、簡単な掃除だけで終わる日もあるほどだ。エリオットはその空き時間を裁縫にあてることにした。  手先は器用な方だった。視力が落ち始めた始めたシェリーに代わって、破れたシャツの繕いやズボンの裾上げはエリオットがこなしている。花の刺繍は姪っ子や近所の子供たちにも好評だ。  作るのは、上衣を飾る腰帯にした。頭巾と迷ったが、サイズを気にせず作れる方が都合が良いのだ。せっかくだから布地と濃淡の異なる青い糸を用いて、細やかな大判の花でも描いてみようかと構想している。  日々の雑務の合間に、針仕事と向き合い始めて四日目。
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