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 木立の向こうに、一際大きく枝葉を広げた古木の影を見止めた。祭殿は近い。  ユフィの病状については不明な点が多い。慌てた魔法使いの説明は要領を得なかった。  けれど、たったひとつだけ、確実なことがある。  ――御子様は……、ユフィ様は、『真実の愛』に目覚められたんだ。  エリオットには、それが具体的にどういう状況を指すのかはわからない。少なくとも何かが変化したことは確かだ。ユフィには以前から想い人が居たはずなのに、森はこんなに華やかではなかった。ユフィの心根か、それとも相手がやっと彼の想いを受け入れてくれたのか。  ともかく、幸せの絶頂であったはず。それなのにこんなことになってしまうだなんて。  色々な感情が渦巻(うずま)いて泣きだしそうになりながら、エリオットは祭殿へと到着した。使用人の後に続き、塀を切り取るように造られた勝手口をくぐる。 「すみません、ユフィ様は散歩の途中に倒れたということでしたよね?」 「ええ、そのように聞いております。ユフィ様がどこにも見当たらないことに気づいた祭殿の者が総出で探したところ、森の中に倒れているところを発見したのだそうです」 「意識は? 怪我とか、誰かに襲われただとか……」 「申し訳ない、私は急いで貴方様をお迎えに行くよう仰(おお)せつかっただけで、詳しいことは何も」 「そう、ですか」  建物を迂回し宿房(しゅくぼう)を目指す。雨に打たれる野草畑を眺めつつエリオットは思案した。
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