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 ――きっと慌てていて従神官が指定する相手を間違えたか、魔法使いの人が聞き間違えたんだ。  どちらにせよ求められていたのはエリオットではない。  では誰を、と考えた瞬間、ある可能性に思い至る。 「あ! あの、母、シェリーは今店に居なくて! でも通信用の手紙が家にあるんです、すぐに連絡してみますから」 「待って」  弱々しくも威厳のある声で引き止められる。その手が、いつの間にかエリオットの服の裾を掴んでいた。 「いら、ない」 「え……」 「シェリーは、必要、ない。エリオットが、良い……」  予想だにしない台詞にエリオットは狼狽(うろた)えた。勝手に傷ついたことが顔に出てしまったのだろうか。病人に妙な気を遣わせてしまったかもしれない。  ユフィは、薄く笑った。軽く裾を引っ張られ、エリオットは仕方がなく、椅子を引き寄せて腰を下ろした。 「……あの、お加減は」 「体の末端が、痺れているような気が、する。それから、悪寒(おかん)。寒くてたまらない。息が苦しい。……それぐらい、かな」  ひゅ、と咽を鳴らしたユフィが咳き込みはじめる。エリオットは反射的に、先ほどまで服を掴んでいた彼の手を握った。 ぞっとした。指先から手首まで、氷のように冷たかった。死人のそれだと告げられても違和感がない。ユフィの死、という現実が一瞬で目前に迫り、エリオットは泣きだしそうになってしまう。 「どうして……原因は分からないんですか⁉ どうして皆さん、そんなに落ち着いていられるんです⁉」
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