正陰さん

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 ですが、そんな陽だまりのような彼と過ごす日々は、必ずしも幸福だけではなく―― 『…………』  ある穏やかな朝のこと。  ただ、無言で庭園を見つめる私。正確には、橘の花が美しく咲いている辺りで仲睦まじくお話しする正陰(まさかげ)さんと姉の姿を。そして、その度に痛感します。あの二人の間に、割って入る余地などないのだと。それは、きっと私がまだ子どもだからという理由だけでなく――そもそも、恐らくはあの二人の仲を裂くことが出来る人など、この世にただの一人もいないでしょう。  ですが、それならそれで構いません。ならば、せめて最愛の女性(ひと)の妹として、今後もずっと私のことを大切にしてくれたら――ですが、そんな秘めたる願望(ねがい)は思わぬ形で潰えることとなります。
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