小さなテーブル

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はるばる村長がやってきた。 魔法使いの見習い修行に出てから一度もふるさとには帰っていない。思い出の中の村長と比べたら髪も白くなった気がする。 五年分だけ年取った感じ。 小さな子どもにもきちんと応対する、しっかりとした大人の人で、村長の事を先生みたいに慕う子供もいっぱいいた。 私も遊んでもらったりしていた。ちょっと懐かしい。 村長は部屋の中を見回して、にっこりとした。 「マルンちゃん、久しぶりだね。いや」 相好を崩して私の頭をなぜようとしたその手を引っ込めた。 「黒いローブが似合っているよ。今は独り立ちしたんだよね。改めてちゃんと挨拶するよ」 山高帽子を手に取って胸にあてて「泉の魔女、マルン様。久しぶりだね」と、きちんと挨拶してくれた。 照れるー。 「久しぶりです、村長。やっと見習いから一歩進んで魔女になったばかりで」 身長は村長の肩ほどもない私だけど胸をはってしっかりと答える。
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