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あのおっさんかぁ。
まだ村にいたころ、十歳くらいかな。
ニチャニチャ笑いながらなめるように胸元を凝視されたことがある。
そんな経験のある私としては、ちょっとだけ「ざまあみろ」と思わないでもない。
「でも、窓は……開いていたんですよね?」
と言っても小高い丘の頂上にある塔の小部屋は村のどの建物よりも高くって、窓の中がのぞける場所はすぐ横の山の中腹あたりくらいになると言う。
うん、思いだすなぁ。村のどこからでも見えるその塔はとても目立っていて、朝日を一番にうけて早くから明るく輝いていた。
「そして、凶器は……すぐ横に落ちていたんでしたっけ?」
後頭部の殴打された傷跡にしっかり合致するようなクリスタルの灰皿がおちていて、そこにはべったりと血の跡が。
「クリスタルの灰皿って、なんだかドラマみたい」
どこでそんな知識を仕入れたんですか先輩。
「窓から下へと呼びかけて皆に来てもらって一緒に部屋の中を調べたけど、手がかりは全然なくってね」
「何人くらい?」
「ざっと20人くらいかな?」
ぎゅうぎゅうだ。
「ずいぶんみんな暇なのね」
言わなくてもいい感想ですね先輩。
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