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第1話 友人に離婚の危機?
「ねえねえ貴方、貴方のお友達のスティーブンスさんが離婚の準備に入ってるって本当?」
ある日俺が家に戻ると、妻のシェリーが玄関にたたたたたと駆けてきて、お帰りなさいの前にそう聞いてきた。
「ただいま。いや、初耳だけど。……その前にちゃんとお帰りのハグをしてくれないのかい?」
「ああごめんなさいロバート、ついあんまりにも噂を聞いてびっくりして」
そう言って俺はシェリーを抱きしめ、軽くキスをする。
「夕食はまだ? ごめんなさい、先に済ませちゃったけど」
「それならちょうどいい。君は話をじっくりしたい様だし」
「待っていられたらよかったんだけど、何か今日作った煮込みの出来がとっても良くって! ついついつまみ食いしすぎちゃって!」
そう言いながら出す妻の手料理は、確かに絶品なのだ。
大概はローストビーフでもチキンでもポークなのだが、時々こってりとした汁物を出してくれる。
ハッシュ・ド・ビーフを当初は作ろうとして、家庭雑誌に載っていたレシピを参考にしたのだと。
そして何となく水を入れすぎた、と思った時に残っていた野菜も一気に片付けようと煮込んだら、野菜の味が加わって、絶品になったのだという。
温め直したそれを、深皿にたっぷり盛って出し、小ぶりの丸パンを添えて。
こういう時結婚して良かったとしみじみ思う。
独身の頃ときたら、朝はスタンドでサンドイッチ、昼は定食の多い安上がりな店を同僚と一緒に。
そして夜も途中の店でフィッシュアンドチップスを買ったり、まあ何かしらの屋台料理。
時には同僚とビアホールで軽く食べて。
だけどそれではなかなかに身体の疲れが取れない。
けど今はどうだ!
妻の料理は本当に美味い。
朝はきちんとしたプレートに感動した。
カリカリベーコンに、俺の好きなターンオーバーの目玉焼き、それに自家製ジャムやマーマレイドを添えた薄いトースト。
しかもトーストはマフィンになる日もある。
妻はともかく料理好きで、しかも食べることが好きなので味にはうるさい。
俺は今まで人生でこんなに美味いメシを食ったことが無いので、毎日が感動の嵐だ。
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