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4
スコールのような雨と強い風、そして雷鳴は段々と近づいてくる。
大きな雨粒が窓を叩き、木々がうなりを上げ、外は夜のように暗くなった。
兄が消息を絶った日と同じ光景に、胸騒ぎを感じた凜は、兄の石を手に取ると握りしめた。
そして、またしても裏山に雷が落ちる。
耳をつんざく轟音に一瞬飛び上がった。
雨が小降りになってきた頃、ゆっくりと玄関のドアを開けた。
水たまりを避けながら大股で丘を登っていく。
祠を視界に捉えたとき、2人の見知らぬ人影を認めた。
大きな斧を担いだバイキングのような大男と、スラリとしたローブを纏った女性。
まさに、1年前に兄が消えた日と同じだった。
近づいていくと、次第にしっかりと視界に捉えた2人は、こちらに視線を向けていた。
「あの ───」
兄の消息を知っているはず。
気持ちは急いたが、何を言えばいいのか分からなくなった。
口をパクパクしたまま、突っ立っていると女の方が口を開いた。
「私は魔女・キルケ。
ユウト様が、あんたを気にかけていてね。
様子を見てきて欲しいと命じられたのだよ ───」
男の方は、斧を祠に立てかけて髭面をクシャクシャにしながら笑顔を作り、
「ギムリだ。
人は俺を、ドワーフ王と呼ぶ。
あんたはユウト様の妹さんだな」
凜は「あー」とか「うー」とか言葉にならない呻きを口にするばかりで、目を丸くして手をヒラヒラ動かすばかりである。
「説明するより、連れていった方が早いんじゃないかしら」
「うむ。
どうかな、お嬢さん。
俺たちと一緒に来るなら、ユウト様に会わせてやろう。
どうするかは、自分で決めたらいい」
ポーチに入れていた石を取り出した凜は、じっと見つめた。
吸い込まれそうな青い宝石は、いつもより黒ずんでいるように見えた。
「それは ───」
ギムリは何かを言おうとしたが、キルケが手で制した。
「わ ───
私、行き、ます」
喉の奥から絞り出すように、やっとの思いで口にした。
次の瞬間、白い閃光が辺りを包み、地面が消えて落ちていく感覚に襲われた ───
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