0人が本棚に入れています
本棚に追加
私が四歳の時、母が育児放棄をした。
理由は分からないが、母は私の顔を見るたびに「お前なんか産まなきゃよかった」「お前さえいなければ」と言っていたのを覚えている。
カーテンが締め切られた薄暗い部屋。
ゴミが散乱したリビングで、私は一人ポツンとテレビを見ていた。
お腹が空いて冷蔵庫を覗いても何も食べるものはなく、空腹を紛らわすために指をしゃぶって、ただ母の帰りを待つだけの毎日だった。
朝方に帰ってくる母はいつもお酒の匂いをさせながら、寝ている私を乱暴に揺すり起こし
「沙和は可愛いねぇ。お母さんの子でよかった」と言いながら、私の身体を強く抱きしめる日もあれば、「なんでアンタなんか産んだんだろう」と苛立ちをぶつけるように私に手をあげる日もあった。
泣きじゃくる私を見ながら、決まって「ごめんね。ごめんね」と泣きながら謝り私を抱きしめる母が恐かったけど大好きだった。
私には母しかいなかったから……。
でも、その日は突然やってきた。
母に知らない建物に連れて行かれて「今日からここが沙和の家よ」と言われた。
周りには知らない人しかいなくて、不安で泣きじゃくる私を虚ろな目をして黙ったまま強く抱きしめた母のその腕は震えていたように思う。
そして、そのまま私は児童養護施設に預けられることになった。
母は私を捨てたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!