おかえり

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あれから数年後、実母である白井美幸が私を引き取りたいと言っていると小森夫婦から聞いたのは高校入学してすぐのこと。 母と再会するのは数年ぶりで、懐かしさよりも恐怖が勝っていた。 まだ、子どもの私にはどうすることも出来ず、児童相談所の職員が間に入って話し合いの場が設けられることになった。 「お母さん、元気だった?」 「……うん」 「そう。よかったわ」 お母さんが少し悲しそうに微笑んだことに胸が痛んだ。 再会した母は、私の記憶の中のとはかけ離れた容姿をしていた。 あの頃より痩せこけていて顔色も悪い。 そして何より……私を捨てたあの日のように目が虚ろで生気がないように見えた。 でも、そんな母を見ても不思議と怒りや憎しみの感情はなく、ただ「あぁ、あの日の母だ」という寂しさと、どこか他人事のように感じたのも事実だった。 それからは話が進み、母と住むことが決まった私は高校から引っ越しをすることになった。 引越し当日。 小森夫婦と一緒に過ごした家を見て、胸がギュッと締め付けられるような感覚がした。 小さくお辞儀をしてから庭に目をやると、あの日見た景色と同じ紫色の花が咲いていた。 思わず、その花を見つめているうちに涙が溢れて止まらなくなった。 小森夫婦はそんな私を優しく抱きしめ、何も言わずにただ背中を撫でてくれた。 それがとても温かくて優しくて……私は声を上げて泣いた。 「ここは、ずっと沙和ちゃんのお家だからね」 そう言って、小森夫妻は私が見えなくなるまで手を振り見送ってくれていた。
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