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あの日から四年の月日が流れた。
離れていた期間が長すぎたのか、親子なんだという実感はあまり湧かないまま、実母との生活はそれなりに上手くやっていたと思う。
ただ、心のどこかで「この人は母親ではない」と線を引いている自分がいた。
そんな私を見透かしているのか、母も必要以上に干渉することはなかったし、それが私には有り難かった。
高校を卒業し、就職してから間もなく母が再婚したのを機に私は一人暮らしを始めた。
慣れない生活と仕事。
毎日が慌ただしく過ぎていく日々の中で、ふとした瞬間に思い出すのは小森家での生活のこと。
庭の手入れをしているお父さん。
ウッドデッキに座るお母さんは私が来ると嬉しそうに微笑んで隣に座るよう促してくれるので、それに甘えるようにして並んで座ると「どうしたの?」と優しく聞いてくれる。
私は何も言えずただ首を横に振るだけだったけどお母さんはそれ以上何も言わずに私の頭を優しく撫でてくれた懐かしくて温かくて優しい思い出に胸が切なく締め付けられた。
そして、同時に感じていたのは……寂しさだった。
会いたい。
あの場所に帰りたい。
強い衝動に駆られ、私の足は小森家へと向かっていた。
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