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大学を卒業し商社に入社した私は、25歳の時に出会った男性と2年間交際し、27歳の時に結婚した。
1年後に『冴月(さつき)』という名前の女の子を出産し、私は会社を辞めて子育てと主婦業に専念した。
冴月が小学校6年生の夏休みに、私は娘と2人で実家に帰省した。
晴天のある日、私は冴月に実家の裏山の美しい蝶を見せてあげたいと思って、冴月を連れて裏山に入った。
裏山の風景は28年前と何も変わっていなくて、私は懐かしく感じていた。
しばらく歩くと、小さな滝の沢が見えてきて、ここで大きな石の上に冴月と一緒に腰かけた。
冴月と水筒の水を飲みながら辺りを見回していると、近くに薄紫色のハナトラノオの花が咲いていた。
その美しいハナトラノオの花を見つめていると、そこに美しいキアゲハが舞ってきて、ハナトラノオの花に舞い降りた。
私はそっと立ち上がって冴月と一緒にキアゲハを見ていると、そのキアゲハが急に光り出して、キアゲハは強い光に包まれて見えなくなった。
少しすると光が和らいで、その光の中から琴羽さんの姿が現れた。
そこに現れた琴羽さんは28年前の小学校6年生の姿のままで、私はその状況についていけず呆然とその場に立ちつくした。
「花蓮ちゃん、元気そうだね!」
突然、琴羽さんに話しかけられた私は驚いて、
「琴羽ちゃんなの?」
と聞くと、
「そうだよ!」
と琴羽さんが笑顔で答えてくれた。
「会いたかったよ!」
私が自分の思いを正直に伝えると琴羽さんは、
「私もよ!
実は私は、花蓮ちゃんと出会う1年前の12歳の夏に病気で死んだのよ…」
と教えてくれた。
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