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『日当30万円。実労働3時間。簡単な運送の仕事』
お盆前に闇バイトと怪しみながら応募した。履歴書はいらないが、代わりに携帯の番号と免許証の写真の提示を要求された。運送の仕事をするのに免許証を持っていないと困る、との理由だった。今考えれば逃走を図れないようにするために、住所や名前を抑えておくためだったのだろう。
実際任務に入る前に怖い人から、「逃げたって無駄だからな。お前の名前も住所も電話番号も知ってる」と脅された。
確かに仕事内容とすると難しいものでは無かった。一件はエンジンをかけたまま車で待機していて、強盗が終わった犯人を乗せること。もう一件は死体を山中に運ぶこと。
確かに実労働とすると3時間だが、内容があまりにヘビー過ぎた。山中に運ぶことが任務だったので、運んでそこら辺にポイッとしてきたら怖い人に激怒され今に至る。やはり怪しい仕事はすべきではないと今更ながら思う。
目の前で何かを探している影は、俺が埋められてアイツも埋められたあと、すぐに海からあがってきた。「これも違う」と言葉を発しているので人間だと思いたい。それは切なる願いだ。
「あった」
人影は浜辺から拾い上げた何かを空に掲げた。月のない空に掲げたところで何がわかるのか疑問だ。
「あと一個。あと一個」
人影はつぶやくように言う。そのつぶやきさえ波音の隙間を縫って耳に届いてくる。
どうやら人影は何かを集めているようだ。早く見つけていなくなって欲しい。
地中に埋められてどれくらい経ったのだろうか。体が冷えてきて尿意を感じる。しかし地中に埋まっている体は全く動かせない。こんな状況は滅多にない。その状態で放尿したらどうなるのだろうか。我慢すればもう少し粘れそうだが、好奇心がそれを上回った。
俺は禁断の何かをぶち破るように、股間の緊張を緩めた。ほんのり温もりを感じる。
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