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夜が明けるころ人の声が聞こえた。
「うおっ!なにやってんすか?」
ロングボードを抱えたウェットスーツの若い男に声をかけられた。
「悪いんだがここから出して貰えないか」
若い男は仲間達と一緒に掘り出してくれた。もう一人の埋められた人間が気になったが、姿形がなくなっていた。
俺よりも海側に穴を掘られていたが、波がさらったとは考えられない。波が満ちてきてその波が砂を流し逃げ出せたとも思えない。
まさか埋まってしまったのかと思い近づいてみたがいなかった。狐につままれたような感覚の中その場から離れようとした時、足元に違和感を感じた。
なんだろうと思い視線を向けると、手のような形をした砂の塊が砂浜から飛び出て俺の足首を握っていた。その傍に丸く砂がくり抜かれたような部分が二つあった。その下がパカリと開いた。
「一緒に行こうよ」
口だった。おどろおどろしいトーンで俺を誘う。よく見れば丸くくり抜かれた部分は目に見える。
足首を握っている手に力が入った。
連れていかれる。
そう直感が働き必死でそれを振りほどいた。
発狂して逃げる俺を、先程のサーファー達は訝しげに見ていた。
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