2人が本棚に入れています
本棚に追加
2年の月日が経った。
「陛下、こんにちは。今日はいい染物がありますよ。」
王は……元王は城下に買い出しに来ていた。
もともと民に寄り添って生きてきた元王。
退位した後でも民からの人気は絶大であった。
「おぉ、いい品だ。しかし今の私には持ち合わせがない。いつか来た時に手にできる用、一生懸命働くとするよ。」
「そんな……良かったらこれをお持ちになってください。」
「いやいや、私はもうただの村人。しっかりと働き、稼いだ金で身の丈に合った生活をしていくよ。」
もともと高級品に執着はなかった。
元王は、自分の力で働き金を稼ぐことの難しさを知り、またそれを楽しんだ。
何でも不自由なく手に入ったときと比べ、確かに不自由ではあったが、それが世の常なのだと元王はすぐに理解した。
何もしなくても食卓に並んだ料理。
その材料を元王は背負い、重さを実感する。
「さぁ、帰ろう。」
麻袋を担ぐその肩は赤く腫れ、痛みを感じたが、今はその痛みも幸せだった。
人として生きる。
そのことを元王に実感させてくれる、そんな痛みだったから。
最初のコメントを投稿しよう!