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ある日のこと。
「陛下、狩りに出かけませぬか?」
マリアの提案で、王は近隣の山村を拠点に狩りを楽しむことになった。
こういう時、本当にマリアは良く自分のことを気遣ってくれる。
王はマリアに絶大な信頼を置いていた。
彼女の5歳になる子にも、城を自由に出入りする機会を与えたことで、王とマリア一家は本当に家族のように接したのであった。
そんなマリアからの提案は、王にとって願ってもないことだった。
毎日絶え間なくやってくる縁談の話。
断ることにも疲れてきた王にとって、少し城から離れた山で狩りを楽しむということが、どれほど自身の気分を変えるものになるのかと、王は素直に期待した。
マリアは他に護衛をつけることなく、夫と子供に留守を任せ、王とふたりだけで山村へと向かった。
重臣からは、
「もし道中、何者かに襲われたらどうするのだ!」
「縁談の話は毎日やってくるのだ。3日も城を開けるなど非常識だ!」
と、散々非難されたマリアであったが、彼女は凛として自分の意見を曲げることはしなかった。
「陛下のため。如いては今後の王国の未来のためです。」
そう重臣たちに言い、誰も反論出来なくなった状況で、王とマリアは城を出たのだった。
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